研究概要 |
1.スギカルスによる赤色(良色)天然色素の生産 赤色および黒褐色の心材をもつスギ立木の形成層からそれぞれカルスを誘導し、培養中に着色するその色調を比較したが、外植体の心材の色調とカルスの生産する色素の色調との間に、明確な相関性は認められなかった。これまでのところ、スギカルスから確実に赤色の色素を生産する培養条件は見いだされていないので、引き続き検討する予定である。 スギ形成層から誘導したカルスとスギ材との化学成分を比較した。カルスの細胞壁構成成分のうち、セルロ-スとヘミセルロ-スの含有量は木材に比べて低く、リグニンのそれは逆に高かった。また、ヘミセルロ-スとリグニンは質的な違いも示唆された。カルスのジクロロメタン抽出物からは、ジテルペン、トルテルペンあるいはステロイド類である9種の成分が確認され、そのうちの3種はferruginol,sugiolおよびβーsitosterolと推定された。また構造未確認の4種は、材には存在しないカルス独特の成分であった。カルスのアセトン抽出物から、dーカテキンを含む7種の成分の存在が確認されたが、材に存在するsugiresinolなどのノルリグナン類は検出されなかった。白色のカルスと赤色や褐色に着色したカルスとの間には、抽出物の含有量に差がみられた。赤色と褐色のカルスから得られた2種の抽出物の色調の差を、分光学的に定量化することができた。 2.スギ黒褐色(不良色)心材の脱色 種々の脱色剤を用いてスギ黒褐色心材材の脱色を試みた。その結果、過酸化水素系よりも塩素系脱色剤の方が優れていることがわかった。材色に対応した最適の処理法を確立させるために、引き続き検討を行う予定である。
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