研究概要 |
水溶性メチロ-ルセルロ-スの分解過程を利用したセルロ-スの新しい過ヨウ素酸酸化法を用いると、均一反応で、わずか10時間で酸化率80%以上の生成物が得られ、反応過程で著しい重合度低下も生じない。この方法で得たジアルコ-ルセルロ-ス(DAC)は、熱圧締によりフイルム化することが可能であり、また、これを出発物質にしてセルロ-スに対すると同様の反応で、種々の新しい誘導体を導き得る可能性がある。そこで、本研究では、均一過ヨウ素酸酸化法を用いて、高開裂率(高酸化率)の2,3ージアルコ-ルセルロ-ス(DAC)を調製し、その粘弾性を、セルロ-スと対比して検討した。動的力学測定の結果、110Hzでー70℃、および112℃にピ-クを示す緩和過程を見いだした。第1の過程は、誘電緩和とも関係し、セルロ-スにおけると同様にメチロ-ル基の運動によると見なされた。一方、第2の過程に匹敵する過程はセルロ-スに存在せず、これはグルコピラノ-ス環のC_2ーC_3結合の開裂によって生じたものであり、主鎖のミクロブラウン運動によると考えられた。応力一伸度測定から、DACのガラス転移点は80℃と推定され、これより高温側(112℃)で伸度は200%に達した。さらに、ジアルコ-ルセルロ-スを出発物質としてオリゴオキシメチレンエ-テル基を持つ誘導体(diーOAc)を調製し、セルロ-スから得たもの(COAc)とその粘弾性を比較した。セルロ-ス系誘導体の特徴は、主鎖と分離してあらわれる側鎖のミクロブラウン運動は同時に生じていることが明らかとなった。これらのことから、過ヨウ素酸酸化によるC_2ーC_3間の切断にともなって、力学的にはグルコピラノ-ス環の特徴が消滅し、従来と全く異なるセルロ-ス系材料が得られていることが分かった。
|