研究概要 |
木管楽器とはいえ木製でない楽器が増えつつある。そこで本研究の第一の目的は,管体の材質と音色の関係を検討する方法を確立し,それを明確にすることにある。また第二の目的は,リ-ドの材質と音色の関係について求めることにある。本年度は上記の目的を達成するため,主にリ-ドについての研究を行った。得られた成果は以下の通りである。 1.官能検査の結果,クラリネットの音色としては,響きのある豊かな音が好ましいことが分かった。 2.音の響きは残響時間と減衰速度に,明るさは倍音スペクトルの傾斜に,柔らかさおよび豊かさは高周波数成分の量および低次奇数倍音の量にそれぞれ影響される。柔らかさに豊かさが影響することが今回明確となったが,それは高周波数成分が少なくても,低次奇数倍音の少ない貧弱な音であれば,よりかたく聞こえるということである。また,豊かさが柔らかさにも影響されることも今回明らかとなったが,それは低次奇数倍音が多くても,高周波成分の多いかたい音であればより貧弱に聞こえるということである。 3.リ-ドが吸水するに伴い,音色はいちど好ましくない状態になるが,一定時間後に好ましい方向に変化する。しかしそれ以降再び好ましくない音色へと緩やかに変化する。このような変化は,吸水による材の軟化を水分吸収による重量増加の効果が組み合わされて生じたと考えられる。またこの変化は,「リ-ドは湿らせて使うが湿らせすぎるとよくない」という経験則とも一致する。 4.適度に使用し,「馴らし」たリ-ドは吸水速度が遅く,すぐに湿りきってしまわぬために,未使用のリ-ドに比べて好ましい音を発生する時間が長い。これは適度な吹奏によって,表面の気孔がふさがれることによると推察した。
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