研究概要 |
かんな削り作業における,かんな台を押さえる力とかんなを引く力を被験者の左右上腕三頭筋と長掌筋において測定を行った。主に,かんな台を押さえる力は上腕三頭筋の放電によって測定でき,引く力は長掌筋の放電により測定可能であることが判明した。50cmの長さの材料における木工作業熟練者では,右長掌筋の放電がやや少ないが,その他の筋放電は高くなった。このことから,右上肢は主にかんな台を押さえることに作用し,左上肢はかんな台頭を押さえながら,かんな台を引くことに大きく作用していることが判明した。かんな台を引く作用の主働筋は左上腕三頭筋であり,利き手でない,非利き手の押さえる力と引く力のバランスのよい作用の重要性が確認できた。次に,かんな削りのやや難易度の高い短い材料である長さ10cmのかんな削りにおいても,50cmの場合とほぼ同じ結果を得たが,かんな削り時における放電パタ-ンにおいてやや異なった現象が認められた。すなわち,削り終りで測定4筋ともに高い放電のピ-クを示し,削り終りにかんなが後方に流れることに制動を加えていることがこの現象から確認することができた。 木工作業熟練者のかんなの引き動作では,腰,肩の後方への水平移動が大きく,腰の動きを中心とした動きとなっている。また,この動きは腰とかんなの水平移動においては運動連鎖の現象が認められ,腰の動きがかんなの動きに先行した協調運動となっている。加速度については,削り始じめの材料先端付近で加速のピ-クが認められ,削り終わりの材料末端付近で減速を示す加速度変化のピ-クが認められた。この減速を示す加速度のピ-クは削り終りにかんなが後方に流れることに対する制動作用の測定4筋に認められる筋放電のピ-ク現象と一致するものであり,木工作業熟練者の顕著なかんな削り所作の「巧み」の代表例と言える。
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