研究概要 |
平成2年の5月末から6月の間に,西表島(1か所),石垣市(3ケ所),沖縄本島(2ケ所)でシロアリタケを発見し,採集した。それぞれの場所で,発生したキノコの根元を掘り,キノコがシロアリの巣から発生していることと,シロアリの同定を行い,タイワンシロアリであることを確認した。子実体の形態的特徴は,傘の形は市女笠状,直径4〜10cm,中央は周錐状に盛り上り,1.0cm程で,先端はとがっている。柄は円柱状で8〜14cm,太さ1.0〜1.8cm,基部はやや膨んでいる。胞子紋はうす茶色で,胞子の大きさは7.0×4.0μmで卵形〜楕円形であった。これらの特徴は大谷が報告しているオオシロアリタケに似ているが,純粋分離した菌糸の生長が大谷の報告より著しく劣った。菌糸を合成培地,天然培地で25℃で培養したが,いづれの培地も生長が劣り,その中で最も良いのが浜田培地で90日間培養で,コロニ-直径が4〜5cm程度であった。生長した菌糸にはシロアリタケ特有の膨みが見られた。又,巣からは他の菌類(Xylaria属)も見られた。沖縄本島(首里)からの本キノコの採集の報告は始めてである。 キノコが発生した巣の分析結果は,灰分14〜19%,リグニン21〜33%窒素0.05〜3.9%,pH4.5〜5.0%であった。キノコが発生していない巣も分析値に大きな差はなかった。巣に植えつけられた菌糸および地上に発生したキノコをシロアリが食べているのが見られた。両巣とも採集時はかなりの水分を含んでいてもろくてくずれやすいが,乾燥するとかなり固くなった。 キノコの分析値は窒素2〜5%,脂肪2〜5.5%,灰分4〜6%,アミノ酸250μmol/gで,沖縄で栽培されているクロアワビタケ,ニオウシメジと大きな差はなかったが,アミノ酸についてはかなり多かった。14種類のアミノ酸の中で最も多いのはアラニンであった。
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