研究概要 |
本研究ではサケおよびサクラマスの卵を供試し、受精直後から孵化に至る期間、1週間毎に採取した卵内容物中にIHNVを懸濁し、IHNVの消長を観察した。IHNVの感染価は発眼期までの卵内容物中では減少したが、発眼以後は減少しなかった。一方受精直後に卵内に接種したIHNVは不活化されたが、発眼期に接種したIHNVは胚胎に感染増殖した。接種胚はいずれの時期も死亡した。以上の結果から卵表面の消毒は発眼期までもしくは発眼初期に行なうべきであることが明らかとなった。ついで市販の消毒剤のウイルス不活化効果をサケ・マス類の棲息温度および飼育環境温度下(0、15、25℃)で検討し、さらに体表粘液や体腔液等の有機物混入時の消毒効果も検討した。市販の消毒剤はいずれも公称濃度で十分ウイルスを不活化することが出来たが、一部低温下や有機物存在下で効果の低下するものがあった。卵に対してはヨ-ド剤が最も毒性が少なく効果的であった。しかしヨ-ド剤は有機物存在下で効果が低下し反復使用は不可と考えられた。ついで河川水および魚類飼育水中のIHNVの検出法を限外濾過濃縮法を用いて検討した。供試水に肉エキスを0.01%の割合に加え、分子量300,000の限外濾過膜を用いて1000倍に濃縮したところ、IHN発症池では5.6TCID_<50>/1、また長野県下の河川水からは0.56TCID_<50>/1のIHNVが検出された。一方IHNVは10^4μW・sec/cm^2の紫外線照射で完全に不活化され、IHNV汚染河川水を紫外線処理することによりニジマスの飼育が可能と考えられた。濾過紫外線殺菌装置を用いることによりIHNV汚染河川水を用いてのニジマスの飼育が可能となった。以上の成果はIHNV汚染地域のIHNVキャリヤ-親魚から採取した卵でも、発眼期に死卵を除去し、卵をヨ-ド剤(50ppm,15分)で消毒後、ウイルスフリ-の湧水あるいは紫外線処理した河川水を用いて飼育することによりIHN被害を防止出来るという仮説を裏付ける結果となった。
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