研究概要 |
核外遺伝子の指標であるミトコンドリアDNA(mtDNA)と核内遺伝子の指標であるアイソザイムを用いてコイ科およびサケ科魚類の集団構造を明らかにすることを最終目的として、今年度はヤマトゴイとニシキゴイのmtDNAの制限酵素切断地図を作成すると共に、シロサケのmtDNAの超遠心法によらない簡易単離方法の確立および制限酵素切断による変異性の定量を行った。また、サクラマスの養殖集団のmtDNAによる母系数の推定も併せて行った。 その結果、15種類の6塩基認識の制限酵素の切断部位を2重消化法によってヤマトゴイ、ニシキゴイ(紅白、大正、昭和)を調べたところ、12制限酵素で切断片の位置が推定でき、両品種ともにまったく同じ切断地図が得られた。このことから、人為的に作成され、約200年間隔離されて繁殖しているニシキゴイの起源がヤマトゴイと起源を同じくし,遺伝子分化が極めて小さいという興味ある結果となった。 シロサケの凍結組織をコイと同じアルカリーnonーidet処理法によってmtDNAを単離したところ、精製度が悪いので、グラスビ-ズによる精製工程をいれたところ良い結果となった。これによって得られたシロサケのmtDNAを5制限酵素で切断したところ、切断パタ-ンの差は認められず、遺伝的変異性が低い可能性を示した。一方、サケ科のサクラマス養殖集団のmtDNAの制限酵素切断パタ-ンの変異を見ると、各養殖集団には特有のハプロタイプが存在し、シロサケよりも著しく高い変異性を示した。 以上の結果とアイソザイム分析の結果から、mtDNAは集団の母系数の推定に有効であり、繁殖構造の解析に有力であることが示された。次年度はアマゴを解析に加えて母系数からみた繁殖構造の解析を進める予定である。
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