研究概要 |
ワカメの有用形質保存法としての組織培用に適したワカメのAgeと部位,培地組合についてそれぞれ検討した。ワカメ藻体のAgeとしては芽株形成前の時期のものであれば,いづれのAgeでも培養上問題はなかった。部位としては藻体の中肋,芽株形成部,櫛葉部を組織の摘出,無菌化の容易さという点から選んだ。カルス形成能としては櫛葉部,芽株形成部,中肋の順となり、作業の簡便性・組織培養上の効果発現という両面の特性を備えた部位は,櫛葉部に近い中肋が最も適していることがわかった。すなわち,ワカメ藻体の生長帯に近い部位ほど,組織培養に適しているものと考えられる結果が得られた。培地組成としては,PES培地を基本培地に用い,これに植物ホルモンとしてオ-キシン系(3ーIndoleacetic Acid,2・4ーDichlorophenoxyacetic Acid,αーNaphthaleneacetic Acid),サイトカイニン系(Kinetin,Zeatin)について,カルス形成へのホルモンの種類と濃度の影響を観察した。カルス形成は用いたオ-キシン系3種の植物ホルモンでみられたが,サイトカイニン系ではカイネチンでのみみられた。濃度は3ーInduleacetic Acid,αーNaphthaleneacetic Acidでは,0.1〜10μg/lの濃度で,2・4ーDichlorophenoxyacetic Acidでは10μg/lの高濃度でカルスの形成が良好だった。一方,カイネチンでは10^<ー1>μg/lの低濃度域でカルス形成が良好だった。これらの結果から,ワカメの組織培養の場合,用いる植物ホルモンの種類によって,好適濃度に相達のあることが考えられる。次に,培地を液体培地と寒天培地とについて効果の相違について検討した。液体培地を用いた場合,カルス形成に要する時間は,寒天培地を用いた際のそれよりも一般的に長く,長い場合は3〜4ケ月を要した。しかし,これに加水分解デンプンを添加すると,カルス形成は3ケ月以内にみられることがわかった。加水分解デンプンの添加は有効だった。
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