研究概要 |
沖縄県,阿嘉島において分布密度調査を行った結果,いずれの海藻にもProrocentrumの優占的な付着が認められた.特に強い毒を生産することで知られているP.limaの付着密度は全般的に高かった.また電子顕微鏡による観察結果から,未記載種が高密度に出現していることが判明した.また,いずれの種類も,タイドプ-ルから水深30mの海底に至る.広範な分布が確認され,広い環境適応能力を持つことが示唆された. 次に,阿嘉島周辺海域から分離した4種のProrocentrum(P.lima,P.concavum.P.emaginatum,P.sp.)の株を用いて,その成長に対する照度,温度,付着基質海藻の浸出物の影響を調べた.培養実験に当たっては,付着性微細藻の生物量を,in vivo蛍光の測定により迅速にモニタ-するための積分球蛍光光度計を開発し,これを使用して増殖速度を求めた.照度実験では,いずれの種も,1.0ー1.2×10^<16>quanta/cm_2/sec(晴天時の水深約30mの照度に相当)で最高細胞分裂速度を示した.フィ-ルドでは,水深10ー30mまでの間に高い付着がみられ,実験結果と良く一致した.至適増殖温度は26ー31℃の間にあり,P.emarginatumを除く3種は30℃を超えてもよく増殖した.阿嘉島の平均最低水温である19℃以下では,P.emarginatumとP.sp.の増殖は確認されなかった.Prorocentrumが多く付着する海藻,フタエオウギとエツキシマオウギの表面浸出液を加えた培養では,P.concavum以外の3種の成長が著しく促進されたが,ラッパモクの浸出液は4種の成長に影響しないか,あるいは,阻害作用を持つことが明かとなった.しかしフィ-ルドでは,ラッパモクにも多くのProrocentrumが付着していることから,これらの渦鞭毛藻が海藻に付着する理由は,強い光を避けるためである等の可能性も考えられる.
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