研究概要 |
ふ化後まもなく独力で摂餌を開始する仔魚においては、比較的早い発育段階で日周リズムが発現することが予想される。この時期にはまだ眼も完成しておらず、眼外光受容器としての松果体の重要性が示唆される。本研究では、松果体の光受容細胞の構造発達と機能発現の時期を、網膜の光受容細胞の場合と比較し検討した。 材料としては、受精後ふ化までの胚体期が比較的長い(10日)アユの受精卵と、ふ化までの期間が短く(3日)、卵黄が消費しつくされる摂餌開始期(6日)になって網膜が完成するヒラメの受精卵を用いた。各々の発生を追って経時的(2,3,4,5,6,7,9日目)に眼および松果体を含む頭部を摘出・固定し、光顕および電顕標本を作製して、写真撮影・解析を行った。 1.アユにおいては、松果体光受容細胞の外節層板膜が4日目までに、網膜光受容細胞の外節層板膜は6日目になって出現した。 2.ヒラメにおいては、松果体光受容細胞の外節層板膜が3日目に、網膜光受容細胞の外節層板膜は5日目になって出現した。 3.松果体光受容細胞と神経節細胞間の求心性シナプスは4〜5日目までに、網膜光受容細胞におけるシナプスリボンは61/2日目になって出現するのが両魚種において認められた。 以上の結果を行動生理学や生化学的研究の成果と考え合わせると、ふ化日数の長短にかかわらず、アユおよびヒラメでは松果体光受容細胞は受精後3〜4日目には光受容が可能になり、網膜光受容細胞の完成に先立って、(1)外界の明暗識別、(2)外界の光周期への同期すなわち日周リズムの形成、(3)サ-カディアンリズムの確立等に関与していることが示唆された。
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