ほ乳類のリンパ球亜群の分類には、リンパ球表面に存在する各種レセプタ-がマ-カ-として用いられている。魚類においては、それらのレセプタ-をマ-カ-として用いることができるかどうかは検討されていない。そこで、本研究ではブリ末梢血リンパ球を細胞表面抗体(SmIg)の有無によって、BおよびT細胞様リンパ球の2つの亜群に分類し、それぞれにどのようなレセプタ-が存在するかを調べた。 ブリのリンパ球をパニング法によってSmIgをもつ付着細胞群とSmIgをもたない非付着細胞群のそれぞれB細胞様リンパ球とT細胞様リンパ球に分け、それぞれ胸腺リンパ球表面抗原および各種レセプタ-の有無について調べた。胸腺リンパ球表面抗原は間接蛍光抗体法、ヒツジ赤血球に対するレセプタ-はEロゼット形成法、補体第3成分様血清成分に対するレセプタ-はEcロゼット形成法によって検出した。また、各種レクチン(PWM、ConAおよびWGA)およびLPSに対するレセプタ-は蛍光標識した各種レクチンとLPSを用いて検出した。 胸腺リンパ球表面抗原はB細胞様リンパ球にも、T細胞様リンパ球にも検出された。各種レセプタ-のうち、ヒツジ赤血球、ConAおよびLPSに対するレセプタ-はB細胞様リンパ球に、PWMとWGAに対するレセプタ-はT細胞様リンパ球に存在していた。また、C3様血清成分に対するレセプタ-は両亜群に存在していた。ブリ末梢血リンパ球表面に存在するレセプタ-の構成は、B細胞様リンパ球がヒツジ赤血球に対するレセプタ-を保有していたこと、T細胞様リンパ球がC3様血清成分に対するレセプタ-を一部保有し、ヒツジ赤血球に対するレセプタ-を保有していなかったことから、ほ乳類とは異なるのではないかと思われる。また、B細胞様リンパ球は胸腺リンパ球表面抗原やヒツジ赤血球に対するレセプタ-を保有していたことから、T細胞の機能を共有していることが示唆された。
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