○皮膚表面の水の流速が皮膚からの酸素摂取量に及ぼす影響を21.3℃と8.9℃で調らべた。○コイ(体重0.91〜1.55kg)を約30ppmのキナルデンで麻酔し、体側に皮膚呼吸測定用のチャンバ-を装着した。約20lの水中で麻酔から回復させたコイを呼吸室に収容した。呼吸室は約120lの水が循環している水槽の中に収容されている。翌日、全酸素摂取量の測定を午前と午後の2回、皮膚からの酸素摂取量の測定を21.3℃の場合は、50、40、30、20、15、10、7.5および5.0ml/minで、8.9℃の場合は、30、25、20、15、10、7.5および5.0ml/minで行った。皮膚呼吸測定用チャンバ-の巾は2.5cmで測定に用いた皮膚の面積は27.5cm^2であった。このチャンバ-の厚さは、21.3℃では、1.5、2.0および4.0mmで8.9℃では、2.0mmであった。また、体側にチャンバ-を装着しないコイを用いて対照実験を行った。○皮膚呼吸測定用チャンバ-の装着により全酸素摂取量は、21.3℃では27%、8.9℃では16%増加した。21.3℃の場合は、皮膚からの酸素摂取量は流水量の増加にともない増加し、チャンバ-厚1.5mmと2.0mmでは、流水量20ml/min以上で、チャンバ-厚4.0mmでは、流水量40ml/min以上でほぼ一定となった。○8.9℃の場合は、チャンバ-厚2mmについてのみ実験したが、21.3℃の場合と同様な傾向が認められた。全酸素摂取量が21.3℃の場合に比して減少したのにともない、皮膚からの酸素摂取量も減少し、皮膚からの酸素摂取量を一定に保つために必要な流水量や流速も減少し、それぞれ、15ml/min、30cm/minとなった。○以上の結果から、止水状態で頻繁に認められるコイの鰭や体の動きによって生ずるわずかの体表水の流れは、皮膚からの酸素摂取量に影響すると考えられる。すなわち、止水状態では、皮膚からの酸素摂取量は、コイの鰭や体の動きによって調節されていると考えられる。
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