褐藻ホンダワラ類のアカモクは、藻場構成種として重要な種類であるが、従来稀産とされていたシダモクと競合する様相を示している。今回の研究ではシダモクの分布範囲を調べ、かつ両種の交配実験を行うとともに、種苗として藻体断片を用いる方法について検討を行った。 1)瀬戸内海におけるシダモクの分布は従来5ケ所しか報告がなかったが、今回の調査により予想以上に多く生育していることが分った。大阪府岬から山口県八代島までの間に、場所によってはアカモクを排除し、遷移がおこったとも思われるほどに繁殖していた。特に大阪府岬、岡山県牛窓、香川県小豆島、広島県竹原ではいちじるしく、アカモクに替って純群落を形成している場所もあった。 2)アカモクとシダモクの差は、気胞の外形及び雌雄性の2点である。しかしどちらの点でも両者の中間的な個体が採集された。雌雄同株のアカモクは従来珍品であったにもかかわらず、比較的多量に生育する場所のあることが分った。広島県向島のある地点では、アカモクとシダモクの群落のうち24%がアカモクの雌雄同株個体であった。 3)アカモクの卵とシダモクの精子との交配実験を行ったところ、両種でそれぞれ報告されているものと同じ経過をとって幼胚が形成された。現在気胞の形成が始まったところである。 4)秋に成熟するアカモクは、岡山県牛窓から山口県佐波島までの範囲で生育を確かめた。しかし牛窓も佐波島も、生殖器床の形成が確認できなかったので、この点は今後の調査が必要である。 5)この類の4種(ヤツマタモク、ヨレモク、アカモク(春型及び秋型)、ジョロモク)における藻体付着器の断片を用いた再生実験では、出現率に差はみられたけれどもすべての種類で再生直立体が生じた。
|