藻場の造成を図るにはまず種苗を入手する必要があるが、本研究では自然状態での卵放出がどのように行われているかを福岡県産の11種について観察した。また幼胚以外の栄養繁殖の可能性についても検討した。アカモクは重要な構成種であるが、従来稀産種とされてきたシダモクと交替しているように思われたので、シダモクの分布を調べるとともに、両種の交配実験を行った。 1.福岡県での11種における卵放出は、大潮周期とは無関係であること、各種類は比較的固定した順序で成熟していることなどが明かとなった。 2.瀬戸内海におけるシダモクは、大阪府岬から山口県八代島までの間に、場所によってはアカモクを排除し、遷移がおこったとも思われるほどに繁殖していることが分った。 3.アカモクトシダモクの差は、気胞の外形及び雌雄性の2点である。しかしどちらの点でも両者の中間的な個体が採集された。雌雄同株のアカモクは従来珍品であるにもかかわらず、比較的多量に生育する場所のあることが分かった。広島県向島のある地点では、アカモクとシダモクの群落のうち24%がアカモクの雌雄同株個体であった。 4.アカモクの卵とシダモクの精子との交配実験を行ったところ、両種でそれぞれ報告されているものと同じ経過をとって幼胚が形成された。現在気胞の形成が始まったところである。 5.秋に成熟するアカモクは、岡山県牛窓から山口県佐波島までの範囲で生育を確かめた。しかし牛窓も佐波島も、生殖器床の形成が確認できなかったので、この点は今後の調査が必要である。 6.この種の4種(ヤツマタモク、ヨレモク、アカモク(春型及び秋型)、ジョロモク)における藻体付着器の断片を用いた再生実験では、出現率に差はみられたけれどもすべての種類で再生直立体が生じた。
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