研究概要 |
フグおよびイモリにおけるフグ毒(テトロドトキシン,以下TTX)の起源を外因性と仮定し,TTXの起源と代謝に関する以下の研究を行った。1.フグ体内におけるTTXの挙動を調べる手段として,カニュレ-ションにより無毒の養殖トラフグ血管内にTTXを投与し,抵抗性および血中におけるTTXの消長を調べた。トラフグにおける血管内投与時の半数致死量は140ー150MU/20gであり,腹腔内投与時の半数致死量,400ー500MU/20gよりも少なかった。血中TTXは投与後1時間までに濃度を急激に減じ,12時間以降は痕跡的になった。TTXは血中から速やかに減少し,各臓器に蓄積されるものと推察されたが,このことは,致死量末満の投与ならばある程度時間をおけば何度投与しても死に至らずに毒を蓄積できることを示唆している。2.イモリの毒性には著しい個体差があるが、地域による差異もみられ,山間部のイモリは毒性が強く,平地のイモリは毒性が低い傾向のあることに注目し,何が地域差を生じさせているのかについて検討した。そこで岩手県三陸町内の標高3mから標高350mに位置する水田4箇採から採集したイモリの毒性を比較したところ,標高と毒性の間に正の相関関係がみられ,水田という同じ環境下では標高が毒性に影響するとの示唆を得た。3.動物のTTXに対する抵抗性を調べる過程で,カニ類の抵抗性には著しい種差のあることがわかり,イソガニのTTXに対する高い抵抗性の原因を追求したところ,イソガニの体液中には,TTXと結合し,抗TTX作用を持つ高分子成分の存在することを発現した。またこの物質の前投与はマウスに対するTTXの毒作用を軽減した。従来のTTXの研究の中で起源と解毒法の二つが未解決の問題であるが,この発見は後者の解決につながる研究である。
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