研究概要 |
本研究では先ず散乱光検出器の適用条件について検討し,分画試料の回収方法としてストリ-ムスプリッタ-を用いればよいこと,トリグリセリド(TG)分子種間の分離向上のためにはある程度シラノ-ル基を残存したODSカラムを用いることとカラムの低温化が有効であることを見いだした.次いで,この条件下で魚油TGの分子種分析を行い,イワシ油,カツオ油とも高度不飽和脂肪酸をTG分子内に1残基しか含まない分子種が大半を占めていることを明らかにした.また,両魚油とも単独で10%以上を占める分子種は存在しないこと,(16:0,20:5,20:5)を共通成分として含むが,両者とも(18:0,20:5,20:5)を含まないことを共通点として見いだした.一方,両者の異なる点として,カツオ油では主要分子種の一つに(18:0,22:6,22:6)があるが,イワシ油にはこの分子種が殆ど存在しないことを明らかにした.イワシ油の脱ロウ工程中における分子種分布の変化について検討した結果,EPAまたはDHAを分子内に2残基以上もつ分子種を極力失わないようにするといった観点からは-25℃程度の脱ロウ処理が限度であることが認められたが,この温度ではEPAまたはDHAを全く含まない分子種が23ー24%も含まれることを明らかにした.最後に,本逆相HPLCシステムにより脂質の幾何異性体の保持値の解析を行い,次ぎのことを明らかにした.1.シス型とトランス型の双極子モ-メントを比較した場合,基能率のベクトル和からシス型の方が双極子モ-メントが大きく,よって移動相との親和性もより強くなるために早く溶出する.2.オメガ異性体の場合,アルキル鎖の端に二重結合が近付く程遅く溶出するのは,このとき丁度脂質分子のvan der Waals半径が小さくなり,移動相との親和性が減少するためである. 今後は魚油TGのランダム化等にともなう分子種の変化についても検討する予定である。
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