研究概要 |
ふ化仔魚の成長に伴う体脂肪酸組成の変動を調べる目的で、卵から20mmに至る各サイズの仔魚(シマアジ、ブリ、マダラ)を採集し、その脂肪酸組成を分析した。3魚種ともふ化後5ー10mmサイズにかけ著しくDHAのみが低下することが明らかになった。この結果から、海産仔稚魚は特にDHAを強く要求すると推察された。次に、アルテミアへのEPA及びDHAの取り込み実験の際にいずれの形態の油脂がアルテミアに取り込まれ易いのかを検討した結果、幼生中の脂質およびnー3HUFA含量は、TG、ME、EE区で強化後24hで最高に達し、EE区で最も高い取り込みが見られるとともに、ME、EE区のTG含量はTG区と変わらない値を示し、エステル型油脂は幼生中で速やかにTGに転換されることが示唆された。そこで、これらの油脂で強化したアルテミアを用いて、イシダイおよびマダイ仔稚魚に対する餌料価値を調べたところ、生残率や活力試験の結果および魚体中のnー3HUFA含量がアルテミア中のnー3HUFA含量とよく相関し、nー3HUFAの取り込みが優れたエステル型油脂、特にEEで強化したアルテミアを仔稚魚に与えた区で優れた飼育成績が得られた。次に、EE型のEPA及びDHAを用いてアルテミアを強化し、ブリ及びマダイ仔魚(7ー10mmサイズ)に対するEFAとしての効果を比較した。その結果、アルテミア給餌期間中のブリおよびマダイともEFAとしてEPAのみでは十分な活力を得る事ができず、健全な種苗を育成するためにはDHAが必須であることがわかった。最後に、マダイおよびシマアジ稚魚(0.5g以上)におけるEPA及びDHAのEFAとしての効果と両脂肪酸の要求量を調べた。マダイ稚魚のEFA要求量はEPA単用区で飼料中1%、DHA単用区で0.5ー1%、EPA,DHA併用区で各0.25ー0.5%、シマアジ稚魚ではDHA単用区で1.7%であることが明かとなった。
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