研究概要 |
1.ウナギ体表粘液中には,DEAEーセルロ-スクロマト挙動から少なくとも2成分のレクチンが含まれることが確認された。そのうち1成分を,DEAEーセルロ-スクロマト,Sepharose4Bでのアフィニティ-クロマト,TSKgel DEAEー5PWを用いたHPLCにより精製し,分子量4〜5万の酸性タンパク質であることを明らかにした。一方,体表粘液中には溶血因子も検出されるが,クロマト操作中の活性低下が著しく,精製は断念した。2.ウナギ血清中のタンパク毒を,DEAEーセルロ-ス,TSKgel Etherー5PWおよびSephacryl Sー300により精製し,LD_<50>が670μg/kgの精製標品得た。毒は分子量15万の酸性タンパク質で,分子量11万と7万のサブユニットより成ると推定された。血清毒の致死活性は,ウナギ体表粘液中の致死因子に対して作製した抗血清では抑制されなかった。以上より,ウナギ血清毒は,体表粘液中のタンパク毒とは化学的のみならず,免疫学的にも異なると判断された。3.魚類体表粘液中の有毒成分の検索を継続し,ウナギ目魚類のヨ-ロッパウナギに新たに毒を検出した。ヨ-ロッパウナギの毒性はウナギと同様に非常に高く,体表粘液1gで体重20gのマウスを4000〜4500匹も殺し得ると見積もられた。ヨ-ロッパウナギおよびすでに毒性を確認しているハモの2魚種の体表粘液中の毒は,いずれもウナギ体表粘液中の毒と同様にタンパク性であり,分子量もウナギ毒とほぼ同程度(約40万)であった。また,ウナギ毒に対して作製した抗血清は,ヨ-ロッパウナギおよびハモ毒の致死活性に対してもある程度の中和効果を示した。これらのことより,ヨ-ロッパウナギおよびハモの毒は,化学的および免疫学的にウナギ毒と酷似すると結論された。
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