本年度はパッカ-の企業行動が市場構造や産業組織に与えるインパクトを分析し、産業組織論からの検討・評価を加えることを中心にして新たな展開をとげている養豚の契約生産と食肉加工業の性格も解明した。 牛肉部門では、需要の減退を主たる契機として大手パッカ-3社の寡占化が進展する。この寡占化はパッカ-の合併・買収と処理場における規模の経済性の追求といった企業行動によって進展し、地域におけるパッカ-の集中度の急激な上昇は、原子的競争構造下にある生産者からの購入価格を低下させる。しかし、パッカ-も処理場における過剰能力の形成やboxed beefによる流通再編によって効率的な競争を余儀なくされており、captive supplyの増大が処理場の運営を改善し、かつ生産者との価格形成に影響している。また、肥育地域の産地間競争では、ハイプレ-ンズでの競争力が減退し、地域内で飼料の自給率の高いコ-ンベルト西部の競争力が拡大している。この牛肉部門での競争の激化は、パッカ-の豚肉部門への進出を促進し、大手3社の寡占的競争構造が形成されつつある。豚肉ではパッカ-と大規模生産者との取引関係がプレミアムや品質管理で強くなっている。それに加えて、規模拡大のための必要資本額が増大したことから、飼料会社を主たる担い手とした契約生産が増大した。このような大手パッカ-の集中度の上昇、多様なコ-ディネ-ションの進展は、シカゴ学派の経済理論がレ-ガン政権下で規制緩和を促進した結果でもある。食肉加工では、食の外部化の進展によって外食産業が成長し、大口納入業者の役割が重要になり、また家禽では処理加工業者の新製品開発などのマ-ケティング活動が市場成果を改善している。 なお、食肉部門を中心に分析・検討したことから酪農部門ととりまとめにまで至らなかった。
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