輸入牛肉が自由化されたのは、平成3年4月であり、自由化前と比較して、我が国の牛肉輸入量のシェアは総供給量の約40%から50%へ増加した。輸入牛肉の自由化は、食肉卸売市場、家畜市場及び肉用牛経営等多くの分野に影響を与えている。食肉卸売市場における輸入牛肉の流通量は、自由化前は畜産振興事業団の管理の下に、牛肉輸入量の約30%が割り当てられていたが、自由化によってその割当がなくなり、現在では数%の流通量しか流通していない。その結果、食肉卸売市場の経営は、輸入牛肉の手数料が減少したことによって悪化している。今後、輸入牛肉が増加すると、国産家畜の増加は期待できないことになるから、食肉卸売市場の再編成が必要である。自由化前の輸入牛肉はフローズン牛肉が多かったが、自由化後はチルド牛肉の輸入が増加しており、国産牛肉との商品競合がおこりつつある。その結果、食肉卸売市場の牛肉卸売価格の低下傾向が現われており、チルド輸入牛肉の品質に近い乳用牛牛肉の価格低下がもっとも激しく、さらに、和牛牛肉の価格低下をもひきおこしつつある。牛肉の卸売価格の低下に連動して、肉用牛(乳用牛、和牛)の価格が低下しており、肉用牛経営が不安定になりつつある。このことは、国産牛肉の供給量の減少となり、その結果、牛肉の輸入量が増加することになる。そのことを予測して、日本の食肉加工メーカー及び商社等は外国の牛肉生産に投資した開発輸入に取り組んでいる。将来を予想すると、我が国の牛肉流通のチャンネルは、現在のような食肉卸問屋システムではなく、食肉加工メーカー等の大手企業の支配するチャンネルに転換するものと考えられる。
|