積雪寒冷地である北海道では、農地規模や営農方法と相まって特徴的な農地保全問題がみられる。本研究は、傾斜農地面での水食と流亡土砂の河川による流送現象を検討したものであり、前年度に引き続いて現地調査を実施した結果、以下の事項が明らかになった。 (1)傾斜農地で水食抑制対策を実施するためには、侵食流亡土量に関する影害因子を定量的に評価する必要がある。USLEの降雨係数Rは、その地域の侵食ポテンシヤルを表わす指標である。Rの算室には、降雨の状況に対応した手法が決められているが、最近の降雨デ-タは一室時間々隔で積算された値として提供される。そして、AMeDASなどの時間雨量では本来の値とかけ離れること、10分などの短時間デ-タによる方が近似することもに流亡土量との相関性も高いことが確認された。 (2)隔雪流出による水食への影害を評価する場合、USLEでは12〜3月の降水量を10倍した値を設定して年間値(R)に加える。これを北海道に適用すると過大になるため、枠試験によって修正値を求めた。その結果、北海道西部で0.113、札幌で0.014と、かなり小さな値が得られた。これらはいずれも、地盤凍結のない条件下の値であるが、人工的に凍結させた札幌の試験地では0.081と6倍近い値を示した。 (3)河川を流下する浮流土砂は、農地で発生した成分も多いと推定される。傾斜畑の周辺には沈砂地等の対策がなされるものの、懸濁能成分の完全阻止は因難である。ここでは、有効な手法を考える基礎資料として、様々な水文・土地利用等の条件と浮流土砂の関係を検討した。とりわけ隔雪期の挙動は特徴的であり、気温〜融雪〜流量の相関性のなかに浮流土砂も対応した挙動を示す。流送土砂量は夏季降雨時に比ベて少ないが、融雪時に降雨があると激増することになる。また、同じ北海道でも土質・土地利用・気象条件の違いによって、発現様式も異なる。
|