都市近郊農村地域では、「長期的な農地の保存」を前提とした農業サイドの圃場整備事業と、「完全市街地への即時の転換」を想定した都市計画サイドの土地区画整理事業の双方が、農村から都市への過渡期に対する配慮を欠くために、その実施が困難になってきている。現在、双方のサイドでは、「緑農住区事業」や「集落地域整備法」のように、双方が相乗りで計画策定や基盤整備を目指すという方向とともに、各々の管轄事業の守備範囲を広げ、圃場整備事業で「宅地の創出」、土地区画整理事業で「農地の保全」を内容に含む、新事業の創設や現事業の運用弾力化を進めている。 本年度は、まず手始めに、換地による土地交換を通じて、圃場整備事業と土地区画整理事業との連携を目指した「緑農住区事業」を詳細に検討した。その結果、現在のゾ-ニング制度のもとでは、土地区画整理区域(=市街化区域)から圃場整備区域(調整区域)に農地を転出させる動機が原則として存在しないため、農地と宅地の計画的分離に有効な土地交換が進まないという基本的な問題があることが明らかになった。農振農用地区域と農振白地との土地交換をねらった「集落整備事業」の場合にも、同様の問題が存在することがわかった。 次に、宅地の創出を含む農業サイドの圃場整備事業の場合は、現在の市街化区域や農振地域等の線引きの見直しまで射程に入れて、事業区域や内容を決めるのでなければ、土地利用の純化と基盤整備水準の向上いう目標を十分に達成することができず、逆に市街化の拡散につながりかねない側面を持つことが明らかになった。 来年度は、農地保全を内容に持つ都市計画サイドの土地区画整理事業の検討を行うとともに、ゾ-ニングと土地基盤整備事業の連携を中心に、都市化への過渡期を考慮した土地基盤整備事業のあり方を総合的に検討する。
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