本来、農業において最適な土地基盤である平坦地から農地が締め出されていく中、秩序ある食糧自給体質の強化を目途として山間傾斜地への農地の造成が行われ、また在来の傾斜地の存在意義が見直されるつつある。本研究は、山間開発農地における土壌侵食防止対策を、農地の開発が在来の農地に与える影響も加味した総合的観点から検討し、次に急傾斜地に存在する棚田や段畑の合理的な再編整備手法を、農地環境保全の視点から考察した。 先ず、国営中国四国農政局広島中部台地開拓建設事業所管内における土壌侵食の実態把握調査とUSLE手法による解析の結果、一つは平畝裸地状態における土壌侵食防止対策として菰による圃場面被覆率が60%を越えれば年間流亡土量が許容値以下に削減できる事、流路に直交して簡易溝を10m間隔で設置した場合、流亡土量を大きく減少させうる事、さらには縦畝栽培での畝長の短縮及び畝間被覆の効果が大きい事等を明らかにした。これらは、中国地方におけるその他の開発農地の諸試験事例とも良く適合し、造成農地の保全管理は造成直後の土壌侵食防止対策の実施(例えば縦畝栽培や圃場末端での横畝や枕畝の設置、畝間への敷藁被覆等)のみならず、営農段階での関係農家のたゆまぬ土づくり及びその他営農努力によってなされるものであると言えよう。 また、岡山県久米南町の棚田地帯での調査の結果、傾斜の上下方向を一体的に整備する必要のある急傾斜地では、傾斜度1/8程度を目安としてより急な部分はまちなおし整備と道・水路整備の柔軟な組合せを、またより緩やかな部分は余り高畦畔とはならない整形整備とする様な、傾斜の上下方向における整備方式の合理的組合せにより、保全を考慮した再編整備がはかれると考えた。
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