貯水池における熱収支・水温変動に基づき、ダム湖における熱的環境と湖面蒸発量を明かにすることを目的として、平成2年度から3年度にかけて高知県内物部川上流の永瀬ダム(香美群物部村、香北町)で調査を行った。期間は平成2年8月〜平成4年2月である。この間台風の来襲や、計器の故障で欠測となった期間があったが、ダム湖の浮きゲ-ト上に設置した温・湿度集録装置はデ-タを10分間隔で記録しつづけた。ただし、平成3年6月ころからしばしば異常値が記録されるようになった。ダム湖に流入する槙山川に水温計を設置して平成2年11月〜平成4年2月の間継続観測した(途中約3カ月程中断)。同じ期間手持ちの風向・風速計でダム湖のデ-タをとった(故障で約3カ月中断)。槙山川、上韮生川、舞川川の週1度の水温調査を行った。また、県の永瀬ダム管理事務所に委託して、全天日射量、午前9時雲量の観測を行った。この外管理事務所の観測している貯水位、放流水温、気温、湿度、蒸発計蒸発量、放流量、定期水温調査などの結果を譲り受けて活用することとした。また、気象庁の高知地方気象台の日照時間、全天日射量、大栃の日照時間、気温、風向風速を適宜参照することとした。こうして得たデ-タはそれ自体価値の高いものであり、現在進行中の解析結果がでれば、湖面蒸発量、湖の貯熱量、水温変動などの貯水池の熱収支解明に役立つであろうと思われる。現在デ-タ整理中であるが、おおまかに日単位での値について計算してみたところでは蒸発量は夏期に2.4mm、冬期に0mmと予想したよりも小さい値がでた。このほか湖面蒸発量は気温との相関が最も高く、次いで水温との相関が高いこと、河川からの流入水温と気温との間には高い相関があること、河川水温は気温よりも夏6°C低く、冬3°C高いこと、深さ40mの水温の年間変動は5°C程度であることなで多くの知見を得つつあるところである。
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