研究概要 |
本邦に分布する新第三紀層の剪断変形挙動と風化特性の解明には構成鉱物粒子間の結合力を強めているとされる膠結作用の機能とそれに関与している膠結物質を特定することが重要との認識から、沖縄島中南部に分布する島尻層泥岩について研究を進めている。 本年度に行った内容を列記する。 (1)試料……未風化泥岩試料を東風平町,玉城村の2ケ所からブロックサンプルする機会を得た。これらの泥岩は島尻層群与那原層中部から上部に相当するところで堆積したものである。 (2)力学試験……両試料について,圧密排水三軸圧縮試験と高圧一次元圧密試験を行い,一般的なせん断特性と圧縮特性を明らかにした。特に玉城村試料は本研究の目的である膠結作用を含水比40%と泥岩にしては高間隙状態で受けており,幾つかの特異なせん断挙動を示した。すなわち,有効応力で整理した場合、排水せん断と非排水せん断で異なった破壊包絡球を示した。 (3)化学分析……これまで採取した泥岩試料,風化泥岩試料,人工風化泥岩試料計約30ほどについて、遊離性および非晶質のFe,Al,Siをそれぞれメ-ラ・ジャクソンとハシモト・ジャクソンの両方法で抽出し、各成分を定量分析した。その結果,未風化泥岩試料間では各成分の含有量で大差がなく,これらの成分と強度との相関は得られなかった。しかし,風化して弱くなったものの一部については明らかに炭酸カルシウムと鉄の溶脱により強度が低下していることを確認できた。 (4)高圧三軸透水試験……試験機の性能と適切な試験条件を決定するのに予想外に時間がかかり、本格的なデ-タはこれからである。圧密圧力30kgf/cm^2,透水圧25kgf/cm^2で蒸留水を1週間透水を継続させ、膨張挙動を確認することができた。
|