最終年度である本年度は、北陸地方の新潟県小出町および富山県福光町の事例をに中心に調査研究を行った。いずれも河川からの取水による農業用水を利用した雪処理が普及している。 小出町はかなり古から流解溝技術が確立されており、市街地での雪処理に最大の効果を発揮している。その水源は、魚野川の支川佐梨川から取水する農業用水であるが、市街地は農業用排水路の流末に位置していて、水源確保に絶好の条件にある。しかし、近年市街地での土地区画整理が行われ、流雪溝整備が進展していて、新たな水源確保や、流解技術の適用が必要となってきた。また、従来の農業水利権から、冬期の雪処理利用のための克雪水利権がされようといている。 福光町は、近世中期より、防火用のための農業用水利用が行われ、あわせて冬期の雪処理のために大きな役割を果たしてきた。小矢部川両岸に開けた同町は、刀利ダムからの補給水を得て冬期水利を行っているが、近年では雪処理のための通水量が増加して、従来の用水路断面では処理しきれないものとなってきている。そこで、流雪溝としての機能を高めるために、農業用水路を改修する計画がもたれている。 以上の実態から、特に農業用水の利用体系ならびに管理機能に及ぼす影響を抽出すれば抽出すれば次のようである。(1)用水路の大勾配への修正による水温低下の影響(2)水路の台形断面への修正による水理条件の変化(3)克雪水利権生成による新たなる水利調整問題(4)水質汚濁による潅漑用水環境の悪化と生産性の低下(5)道路雪・屋根雪投雪による水路の劣化と維持管理費の増加(6)環境を考慮した石積み水路建設が不可能(7)水利施設の共用バックアロケ-ション(8)農業用水および施設の公共・公益性の評価ならびに維持費の負担問題
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