研究概要 |
本年度は,農業機械・施設の具体例として,トラクタ及びライスセンタ,精米施設作業における作業者の騒音環境と作業能率・精度との関連を調査分析した結果,作業者は高レベル騒音環境の下での作業において,作業の判断及び動作に幾多の齟齬を生ずることが認められた。 このことから,別途実験室において,雑音発生装置及びグラフイックエコライザを供試して,騒音の周波数帯域63〜8kHzの範囲で5種類,騒音の大きさ65〜95dBの範囲で4種類を選定した実験条件の下で,作業者の判断と動作を必要とする「指定された色のスタンプを指定枠内に正しく押印する」スタンプ押し作業の動作分析を行い,作業者の騒音環境と作業能率・精度の関連について詳細に検討した。その結果,次のことが明らかになった。 1.騒音が作業者の作業能率に及ぼす影響 作業能率はすべての騒音の周波数帯域において,騒音の大きさが増大するにつれて低下し,また騒音の周波数帯域別では1〜2kHz周波数帯域での作業能率の著しい低下が認められた。従って,騒音の周波数帯域1〜2kHz,騒音の大きさ85〜95dBで最も大きな作業能率の低下となった。 2.騒音が作業者の作業精度に及ぼす影響 作業精度は騒音の大きさの増大につれて低下しており,特に騒音の高レベル域85〜95dBではその低下は著しい。しかし,騒音の周波数帯域別では特に顕著なものは認められなかった。 大要,以上の知見が新たに得られたが,今後は作業現場における本研究課題関連のデータの収集蓄積が新たな農業機械・施設の設計・改良に重要な指針を提供すると判断された。
|