本研究では「雨濡れ」現象を解明するため、葉の雨水付着の状態等について種々の植物葉を使って明らかにし、梅雨、多雨障害及び酸性雨障害などに関して新しい観点からの基礎的資料を得ることを目的とした。 (1)種々の植物の雨濡れ状態の解明:17種の植物葉を使って、植物種、葉齢、葉面ワックス量と雨水付着との関係を解析した。(1)植物種によって雨水付着量は著しく異なり、多い種では約20mg/cm^2、少ない種で2mg/cm^2であった。(2)若い活動葉では雨水付着量は少なく、成熱葉では多い傾向があった。(3)雨水の付着量と葉面ワックス量との間には負の相関がみられた。(4)3日間以上の降雨で葉面ワックス量は30ー40%減少した。 (2)葉の水滴角度の解明:16種の植物葉を使って、水滴接触角度を観察検討した。(1)植物種により140ー58度の広範囲の接触角がみられ、この角度は数日間の降雨処理により減少した。(2)成熱葉の水滴接触角度は若い葉よりも、また葉の先端部は中央部よりも小さく、濡れやすい傾向がみられた。(3)葉の水滴接触角度はワックス量との間に負の相関がみられた。 (3)葉の乾燥速度の解明:降雨を受けた葉は蒸散が大きくなり、その切葉は乾燥速度が大きくなった。この乾燥速度の増大は若葉が成熱葉より、また降雨期間が長いほど著しかった。 (4)本研究の結果、葉の雨水付着量、ワックス量、水滴接触角度との間には密接な関係があることが明らかになった。このことは今後の雨濡れ現象、障害の機構解明にとって重要なデ-タを提供している。 (5)雨水の酸性度の測定:岡山、香川の雨水ともかなり酸性化しており、全降雨回数の94%がpH5.6以下の酸性雨であった。また黄砂飛来時には、酸性化物質が多いが、カルシュウムなどの中性化物質も多く含んでいるので、雨水のpHは7前後の高い値になった。
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