研究概要 |
本年度は,まず植物組織中のCa及びMgの存在を確認するために,葉身横断切片に試薬を滴下し結晶を析出させた.試薬は,Caの場合は2%硫酸(H_2SO_4)を,Mgの場合は1%ミクロコスミック酸(NaHNH_4PO_4)を用いた.Caの場合,結晶は植物組織上にも析出するものの,大部分は組織外に析出した.また,植物組織に比較して結晶が大き過ぎる.Mgの場合,結晶は植物組織内にも析出されるものの,組織外にも析出し,植物横断面上に分布するMgが試薬とともに移動し易かった.Ca,Mgとも,この方法では植物組織内での分布状態を知るには不適であることが判明した. エネルギー分散型X線解析装置により植物組織中のミネラル成分の分布を調べた.ミネラル成分を相対比較すると,イネ科牧草はマメ科牧草に比較してSi,Clの割合が高く,逆にCa,Kの割合が低かった.牧草組織内におけるミネラルの分布を検討したところ,ミネラル7成分の中でSiの分布が最も特異で表皮に集中して分布していた.他の成分はほぼ組織全体に分布していたが,Caは発達した2次細胞壁の一部に特に多く分布する傾向が認められた.K,Cl及びPは特に維管束周辺に多く分布していた.またMgは全体に検出濃度が低く明瞭な結果は得られなかった.Caが発達した2次細胞壁に多く分布していたことは,家畜によるCaの利用率が低いことの1因と考えられる. 植物体内でのミネラル成分の移動のしやすさを究明した.葉身横断切片の蒸留水中での浸漬時間の経過に伴うミネラル含有率の構成割合の変化を調査したところ,いずれの成分も減少しているが,中でもKの減少傾向が最も高かった.Cl及びCaがKにつづいて比較的移動し易い成分であることが推察された.Si以外で最も移動しにくい成分はSと考えられ,つづいてPとMgが移動しにくい成分と考えられた.
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