研究概要 |
LH受容体のアミノ酸配列の部分ペプチドを合成し,家兎に免疫して抗体の作製を行なった。N端側の細胞外ドメインのペプチドに対する抗体を作製したが、SDSーPAGE及びWestern Blottingの生化学的方法や免疫化学的方法によっても、交差性を認めることができなかったことから、このアミノ酸配列の部分はタンパク質の内部に畳み込まれているものと考えられた。そこでC端側の細胞質ドメインの合成ペプチドに対する抗体の作製を引き続き進めている。これと平行してLH受容体の発現を調節する因子について実験を進めた。LH受容体の発現と同時に、ガングリオシド(GM_3,GM_1)や中性糖脂質が発現し、その役割を追究した。タンパク質のリン酸化を促進する試薬(オガタ酸)を用いて、受容体とタンパク質リン酸化の関係を調べた結果、リン酸化が促進される程ガングリオシドGM_3の発現量は増加するのに対し、受容体の発現は低下することを発見した。同様に,タンパク質のリン酸化が促進されるような条件(インシュリン、フォルボルエステル、フォルスコリン、cAMP分解酵素抑制因子などの細胞への添加)により、受容体発現の抑制とカングリオシド発現の促進が認められた。更に、カングリオシドの細胞への添加は受容体発現を抑制したが、カングリオシドからNeuNAcを除いた糖脂質は抑制しなかった。細胞膜に発現するガングリオシドは細胞間の情報伝達物質として、LH受容細膜に発現するガングリオシドは細胞間の情報伝達物質として、LH受容体発現調節に関与することが示唆された。LH受容体の抗体が作製されれば、タンパク合成レベルでのこれらの因子の関与について詳細なデ-タが得られるものと考えられる。
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