第1の実験ではブロイラーの熱耐性を検討した。雛の時期に高温を経験させたものとさせないものの成長時の熱耐性を比較すると、厳しくない程度の高温を経験した鶏が成長時に熱に強いことが認められ、育成時の熱環境がその後まで影響を持っていると考えられた。第2にの実験として気温条件と飼料配合内容がブロイラーの増体ならびに屠体成績にどのような影響があるか検討した。適温と高温下で、飼料中の代謝エネルギーの含有量を一般に用いられているもの、それより多、およびそれより少の3段階、また飼料中の蛋白質含有量を同様に一般量、多および少の3段階に設定して組み合わせた9種の飼料を給与して諸成績を検討した。高温ではいずれの飼料とも体重の増加が非常に悪く、飼料による生産性の著しい改善は難しいと考えられた。しかしながら、飼料の違いが増体ならびに屠体成績に影響を及ぼす傾向が認められることから、暑熱時のブロイラーに適切な飼料は適温時とは違うのではないかと考えられた。第3の実験として高温および常温時に飼料中の蛋白質含有量と代謝エネルギー含有量を変えた飼料を与え、産熱量を測定し、蛋白質およびエネルギー含有量と各環境温度段階における産熱量との関係を検討した。気温が高い時の産熱量、特に採食直後の特異動的作用は、蛋白質含有量が多い飼料を給与した時に大きくなり、体温の上昇も大となった。高温時にエネルギー含有量が多い飼料を給与した場合は産熱量の増加がそれほど多くなく、体温上昇を軽度に抑えられた。以上のことから、高温時には通常のブロイラーの飼料よりもエネルギー含有量を多くし、かつ、蛋白質含有量を少ない飼料を給与することにより、鶏の体熱生産量を通常の飼料よりも低下させることができ、鶏の体温の上昇程度を抑制できることから、夏季の生産性低下の改善に効果があると考えられた。
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