計画に従って、昨年に引き続きUBC(ブリティツシュ・コロンビア大学、2系統)とバンク-バ-近郊の農家(1系統)から試料を入手して、蛋白質と酵素を支配する遺伝子座の遺伝子頻度を測定した。すでに入手してあった近縁のコリンウズラ(日本大学)とヒメウズラ(UBC)についての分析も行った。これらの結果から家畜化或いは系統分化に伴う遺伝的組成の変化、集団間の遺伝的分化の程度、および近縁種のウズラの遺伝的変異性との比較などの点について検討した。 (1)日本の実験用と商業用ウズラについての比較の場合と同様に、カナダのウズラでも実験用ウズラ集団間の分化の方が大であった。カナダの2つの集団は特に体重大の方向に選抜されたものであったが、主成分分析の結果では、相互にまた他の集団とは明らかに異なって位置付けされた。この発見についてはJournal of Heredityに投稿し、現在印刷中である。 (2)コリンウズラとヒメウズラの遺伝的変異性は、多型座位の割合や平均ヘテロ接合体率などの数値からみたところでは、ウズラの1/2から1/3の大きさであった。やはりウズラは他の鳥類に比べると遺伝的変異性は幾分高いのではなかろうかと考えられる。この結果の一部についても岐阜大学農学部研究報告で発表した。 特定の蛋白質や酵素を支配する遺伝子を体重選抜と選び付けることは出来ないが、これらの遺伝子は適応性の点でなんらかの意味を持つているのではないかということ、および家畜化にあたり必ずしも遺伝的変異性の高いことが条件とはいえないが、ウズラの遺伝的変異どの高いことが家畜化や品種分化に際して有利ではなかろうかということ、などは必ずしも否定できない。
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