1.ラット卵巣の凍結保存 一週齢のラットの卵巣を、凍害保護物質として2Mグリセロ-ルを使用した緩慢凍結法とVS1を使用したガラス化法で冷却した。いずれも液体窒素中で30分間保存後、急速融解し、段階的希釈法または0.5Mサッカロ-ス加PBSによる希釈法で保護物質を除去した。光学顕微鏡で観察した冷却・加温後の組織の形態は、ガラス化法で冷却したものが緩慢凍結したものに比べて良好であり、ガラス化法で冷却しサッカロ-ス加PBSで希釈したラット卵巣では、段階的希釈法に比べて希釈が均一である傾向が見られ、器官の凍結における希釈法として有効であると考えられた。以上の結果より、ガラス化法で冷却しサッカロ-ス加PBSで希釈したラット卵巣について、器官培養と移植を行ったところ、部分的な生存性が認められた。 2.ヤギ卵巣組織片の凍結保存 成熟ヤギの卵巣皮質表層から作製した約0.7〜1mm角の組織片を使用し、緩慢凍結法では保護物質として2Mグリセロ-ルまたは1.5MDMSOを使用し、ラット卵巣と同様に処理した。冷却・加温後の組織を光顕および電顕で観察したところ、DMSOを使用し緩慢凍結した組織はグリセロ-ルを使用した場合より損傷が小さかった。ガラス化法で冷却したヤギ卵巣では、サッカロ-ス加PBSで希釈した場合の方が段階的希釈法に比べて組織の形態は良好であり、グリセロ-ルを使用して緩慢凍結した場合に比べて損傷が著しく小さかったが、電顕レベルではかなりの損傷が観察される場合もあった。 今後は器官培養や移植による生存性検定を行うと同時に、より大型の組織の凍結保存も試みる予定である。
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