1週齢のWistar系ラットの卵巣をガラス化法により処理し、器官培養により生存性を検定した。ガラス化法では、摘出した卵巣を一部改変を加えたRallらのVS1に段階的に曝露した後、少量のVS1と共に液体窒素に投入し急速冷却した。液体室素中に30分間以上保持した後、氷水中で急速加温し、段階的希釈法か0.5Mサッカロース加PBSによる希釈法で保護物質を除去した。器官培養法は、50g/mlピルビン酸ナトリウムと10%FCSを含むEagle's MEMを培養液として用い、培養液の液面に保持したメンブランフィルター上に卵巣を置き、4日間培養した。冷却・加温後の卵巣と、対照として無処理の卵巣と保護物質の添加・除去のみを行なった卵巣を培養した。培養後の卵巣は常法により固定包埋し光顕による観察を行い、卵母細胞および顆粒層細胞に著しい損傷の認められない卵胞を生存卵胞として計測した。1卵巣中の1層以上および2層以上の顆粒層細胞を持つ卵胞数は、無処理の卵巣、保護物質の添加・除去のみを行なった卵巣およびガラス化冷却後の卵巣でそれぞれ91.1±29.9、91.4±41.6、および24.7±28.8(平均値±標準偏差)で、ガラス化冷却後の卵巣では無処理の卵巣および保護物質の添加・除去のみを行なった卵巣と比較して有意に減少し、液体窒素中での冷却と加温による傷害が大きいことが示唆された。また、ガラス化冷却後培養した卵巣では特に顆粒層細胞中に核や細胞質が濃縮しエオジンに濃染する死細胞が散在する卵胞が多数認められた。
|