研究概要 |
本研究は胚発生の初期段階でみられた近交退化の原因を明らかにするために,近交退化を示したニホンウズラ初期胚について生化学的解析を行なった。本年度はニホンウズラ近交胚(近交係数25%,37.5%)とその対照集団としての非近交胚を用いて,初期胚におけるヘキソキナ-ゼとホスホリラ-ゼの酵素活性値について検討した。これらの検討に先だち,本実験に用いた近交胚と非近交胚での胚発育およびタンパク量について比較した。その結果,近交胚での胚発育は顕著な遅延がみられ,またタンパク量も近交係数の増加に伴い減少することが明らかになった。 つぎに近交胚と非近交胚でのヘキソキナ-ゼとホスホリラ-ゼの酵素量について全活性値で比較した結果,近交胚でのヘキソキナ-ゼ,ホスホリラ-ゼ全活性値はいずれ非近交胚のものに比較して低く,有意差が認められた。これらの酵素活性値について比活性値(単位タンパク量あたり)でみた場合でも近交胚が非近交胚に比較して低い値を示し,特に近交係数37.5%の近交胚では非近交胚との間に有意差がみられることが明らかになった。さらに胚の発育とそれに対応する胚のヘキソキナ-ゼ,ホスホリラ-ゼ活性値との関係について検討した。その結果,胚発育と酵素活性値との間には密接な関係のあることが明らかになった。 これまでの実験結果から,近交胚ではエネルギ-代謝に関連する酵素の活性値の低下がおこり,これらの酵素活性値の低下が胚発育の遅延をもたらす一因であると考えられた。なお,研究計画にあげた初期胚における各種RNA量の検討は現在実験中であり,まだまとまった結果が得られていない。
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