研究概要 |
鶏凍結保存精子を実用化する目的で、筆者が米国留学中に、暫定的に作成したトレハロ-ス新希釈液(Hiroshima Solution)の改良を試みた。Hepes,Bes,グルコ-ス、ソルビト-ルを含む液を基本液とし、その液に加えるトレハロ-スの濃度について検討した。その結果、0.19,0.22,0.26,0.30及び0.33Mのトレハロ-スの内、0.26M添加の希釈液で凍結処理した精子が最も高い運動性、呼吸活性を示し、融解精液精漿のLDH活性は最も低い値を示した。次に、トレハロ-ス添加希釈液の浸透圧(310,340,370及び400mOs)が融解精子の性状に及ぼす影響について検討した。370mOs区の凍結処理精子の運動性及び呼吸活性が高く、融解精液精漿のLDH活性は340mOs区が最低の値を示したが、370mOs区のそれと間には有意差はみとめられなかった。更に、トレハロ-スを含む希釈液にリン酸二水素カリウムまたは水酸化カリウムを添加してpHを調整し、その希釈液で凍結保存し、融解した精子の運動性、呼吸活性および精漿のLDH活性を測定した。その結果、精子の運動性及び呼吸活性は、pH7.2で最も高く融解精液精漿のLDH活性は逆に最も低い値を示した。また、トレハロ-スを含む希釈液にグリセリンを4、7、10及び15%添加し、それらの希釈液で凍結処理した精子の運動性及び呼吸活性及びLDH活性を調べた。融解精子の運動性及び呼吸活性は、グリセリン濃度が高くなるに従って、上昇し、融解精液精漿のLDH活性は低下した。しかし、グリセリン15%区の精子の運動性及び呼吸活性は10%区に比較してやや低く、融解精液精漿のLDH活性はやや高い値を示した。以上の事から、鶏凍結保存用希釈液に添加するトレハロ-スの濃度は、0.26Mが至適であり、トレハロ-スを含む鶏凍結保存用希釈液のpHは、7.2、浸透圧は370mOsが、更に、希釈液に添加するグリセリンの至適濃度は、10%であることが明確になった。
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