研究概要 |
本研究は,牧草無機成分のなかで可溶性ケイ酸及びカルシウムが繊維分解酵素であるセルラ-ゼによる牧草消化に及ぼす影響について追究したものである。 可溶性ケイ酸が牧草消化に対し抑制的に働らくことはすでに報告されている(下條・五斗,1985,1989)。また,牧草に含まれるカルシウムの約85〜95%は2.5%セルラ-ゼ液による培養で溶出されることを平成2年度の本研究課題において見出している。また第一胃液に塩化カルシウムを添加した場合,高濃度のカルシウムは第一胃内微生物の活性を抑制することも知られている。 本年度は,九大圃場で栽培収穫した暖地型イネ科牧草グリ-ンパニック(Gp)の茎部と葉部を用い,セルラ-ゼ溶液(1.25%及び0.65%)にケイ酸ナトリウム及び酢酸カルシウムをSiO_2及びCa濃度でそれぞれ600及び1200ppmとなるように添加し39℃で48hr培養した。 まず.セルラ-ゼ濃度1.25%の場合,SiO_2濃度の増加に伴い葉部の有機物消失率(OMD)は低下し,茎部では低下の傾向を示した。酢酸カルシウム添加の場合も同様の傾向を示し,可溶性カルシウムがセルラ-ゼの繊維分解作用に対し抑制的に働らくことがCa濃度600ppm及び1200ppmの場合に認められた。また,セルラ-ゼ溶液にCaとSiO_2をそれぞれ600ppm添加した場合のOMDは,いずれか一方を1200ppm含むもので培養した場合のほぼ中間のOMDを示した。つぎに,セルラ-ゼ濃度0.65%での培養結果についても,ケイ酸ナトリウと酢酸カルシウム添加により,供試GPの葉部,茎部ともにOMDは低下することが認められた。セルラ-ゼ濃度とSiO_2及びCa濃度との関連については,セルラ-ゼ濃度が低い場合にOMDはより低下する傾向を示した。本研究の結果,カルシウムは繊維分解酵素による牧草消化を抑制することが示された。
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