実験的に欲求不満状態を作成しその変化を追う予定であったが、その前に実態調査の必要を感じ、計画の2で示した集約畜産方式の再評価と絡めて行った。まず、肥育牛の群飼ペン飼育方式、間接検定肥育方式および繋留方式を肥育全期を通して比較した。牛の典型的な異常行動である舌遊び行動は、繋留肥育方式で圧倒的に多く、肥育前期および中期に多い傾向がみられた。そこで、常時350頭からなる繋留肥育農家で、全頭の行動調査を5月から10月の半年間にかけて行った。その結果、舌遊び行動は全頭の31%で出現し、同様に繋留前期および中期に多発した。また、異常行動の出現に伴い、欲求不満時に出現する行動である身繕い行動、反すう行動(昨年度成果参照)は有意に減少し、さらに屠殺時に内蔵疾患のなかった牛および肉質等級の高い牛に舌遊び行動を行う牛が多いことも明らかとなった。舌遊び行動の実行は、欲求不満の軽減に通じる可能性が示された。 次に、500日間ケ-ジ飼育および開放平飼い飼育されていた産卵鶏を逆にし、その行動変化からケ-ジ飼育における行動的問題を類推した。平飼いからケ-ジ飼育にすることで、偽巣作り行動、偽砂浴び行動などの異常行動およびケ-ジからの逃避行動が新たに出現した。また、給餌量は同じにもかかわらず、摂食行動は1.5倍にも増加した。すなわち、摂食を伴わないつつきの増加を示し、それは行動抑制に伴う葛藤の行動的表現と考えられた。また、無殻卵、軟殻卵などの放卵異常も出現した。以上より、ケ-ジ飼育では探索行動、運動、社会行動、産卵に伴う生殖行動が抑制され、それは摂食を伴わないつつきの増加や異常行動となって出現するものと考えられた。代替法の検討としては、行動的抑制がみられた子牛の単飼人工哺乳方式、肥育牛の繋留方式、産卵鶏のケ-ジ方式にかわる群飼ペン方式、平飼い方式を検討し、改善の程度と共に問題点を明らかにした。
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