研究概要 |
永年草地の中でイネ科牧草は豊富な繊維根群をもつ。本研究はこの牧草根群が草地土壌の物理性,特に土壌構造に関与してくるメカニズムを解明しようとするものである。本年度は主に根の形能的特徴を攻究した。結果の要約は以下のとおりである。イネ科牧草根群は、地上部紫茂状態が旺盛(CC≧70%)であると、土中ヘ侵入せずに地表面で生育する根群が成立する。筆者はこの特異な根群グル-プを″地表根″と仮称し、地表根が発達していわゆるル-トマット形成のメカニズムに特に注目した。地際から上方10cmの微気象は、積算日射量・風速・気温・湿度などの因子のいずれもがCC増加で変化してくる。そして、日射量が群落外のそれの10%以下,湿度が100%という条件を与える状態(CC≧70%)になると根は地表面に出現できる。そして約2カ月を経過すると地表根はほぼ完全に地表を被覆するに至る。これをモデル装置によって室内ファイトトロン内で詳しく確認した。すると,地表根の出現タイプは三種類にグル-プ分けできた。いずれも出現部位は土中5cm深の極浅い位置から分枝して地表へとむかった根群である。さらに、地表根の形態を検討した結果、根の直径は約200μm、内部形態では中心柱の導管径が13μm、と普通根にくらベてかなり縮小していることが判った。一方で、東北、北海道の各地の永年草地おける土壌講造の完態調査からは、上述の地表根と土中5cm深の極浅い位置とを合わせたいわゆるル-トマットの存在が地表付近の土壌に大きく関与している実態を明らかにできた。以上のように,各地の実際土壌(永年草地の)および室内モデル実験の相方から、永年草地の地表根群からなるル-トマットの存在が地表付近の土壌講造の特微に大きく関与しいてる。この事実は、草地の多目的利用のひとつとなる、土壌保全機能にイネ科牧草根群が積極的な約割を果すことが予測でき、今後の重要な検討課題である。
|