研究概要 |
モノクロ-ナル抗体は、一つの抗原決定基のみを認識し、かつ均一な抗体を大量に繰り返し作ることができる利点を持つ。本研究の目的は、畜産領域においてもモノクロ-ナル抗体を開発し、それらを有効に利用するための基礎的研究を行うことであり、今年度は牛、馬および水牛の赤血球抗原に対するモノクロ-ナル抗体を作製し、それを用いて赤血球抗原のより詳細な解析を行い、さらに肉種鑑別用モノクロ-ナル抗体の開発にも着手した。 牛については、1990年の国際比較同定試験で同定した結果、血液型抗原AシステムのA_1、A_2、A dose、Z'、D、BシステムのI_1、O_1、O_1like、O_4、Y、E'_2like、E'x、CシステムのC_2like、X_2、FシステムのFa、Fb(=F_1)、F_1like、F_2like、Fc、Fc dose、V_1、V_2、SシステムのS_1、S like、S_2、H'、H'like、S_1U_1、U_1、U_2およびZシステムのZ_1、Z_1dose、Z_2をとらえる抗体を得た。馬については、得られた抗体を1990年国際比較同定試験で同定した結果、AシステムのAa、A_2、CシステムのCa、PシステムのPa、Pcの5種であることが判明した。水牛については、NWー1、NWー2、NWー3、NWー4およびNWー5の5種が得られた。このうちNWー1は著者らがこれまでに同種免疫により作製したポリクロ-ナル抗体Wh2と一致するものであった。得られた細胞株は現在すべて安定して抗体を産生しており、また産生抗体は培養上清で1〜1,000培、腹水で200〜50,000倍の高力価であることから、これらモノクロ-ナル抗体は家畜の血液型判定に供するには極めて有効であると判断した。 肉種鑑別用モノクロ-ナル抗体の開発は、まず馬ミオグロビンを抗原として作製を試みた。得られた抗体につき、ELISA法により交叉試験を実施した結果、9株が馬肉汁に強く反応した。このうちの1株は馬に特異的であり、クロ-ニングにより馬の肉汁に対するモノクロ-ナル抗体が得られる可能性を認めた。
|