食肉は、家畜の加齢に伴って硬くなることが知られている。本研究は、鶏を用いて加齢に伴う骨格筋の変化を筋原線維構成タンパク質の面から追究し、家畜の成長に伴う食肉の物性変化を解明し、食肉資源の有効利用に資することを目的とした。 1.胚、ふ化後および成鶏に至る鶏の骨格筋における筋原線維の構成タンパク質、特に食肉の物性に関与していると考えられる弾性タンパク質コネクチンの変化を生化学的に追究した。鶏の発生及び成長の過程で、筋肉細胞中のコネクチンが筋原線維に組織化されていく過程を電気泳動法で観察すると、コネクチンは、14日目の胚で出現し、その後発生の経過にともない筋肉組織中の量が急激に増加する。ふ化後、増加の速度はやや低下するが10週齢まで増加し、以後殆ど変化しない。胸筋は、脚筋に比べてコネクチンの出現時期及びそ後の増加速度がやや遅い。従って、鶏の場合には、約10週齢で弾性タンパク質コネクチンの量及び質が成体骨格筋の完成した状態になり、その結果、運動量や発生張力に対応できる弾性を有した筋原線維が構築されることを示している。このことから、コネクチンの変化が、成長に伴って食肉が硬くなることの重要な原因になると結論される。 2.コネクチン、ミオシンおよびαーアクチンに対する抗体を用いて、鶏の発生・成長における筋原線維の形成過程におけるコネクチンの筋原線維形成における役割を免疫組織化学的に追究すると、コネクチンはαーアクチニンとともにミオシンよりも早い段階で筋原線維の周期構造を形成し、骨格筋の発生段階における筋原線維の形成においては、コネクチンとαーアクチニンが先ず鋳型を形成し、この鋳型にミオシンをはじめとする他の筋原線維構成タンパク質が組み込まれるものと考えられ、骨格筋の発生におけるコネクチンの重要性が示唆される。
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