研究概要 |
1.めん羊における揮発性脂肪酸トリグリセライド(VFAーTG)及びカゼイン連続注入のよる人工栄養試験:基礎代謝量に相当する量のVFAーTG(アセチン:プロピオニン:ブチリン=8:1:1,体重45kgで580g/日)を第一胃内に、またカゼインの規定量を第四胃内に連続注入することにより、エネルギ-と蛋白質供給量の一定な条件下で種々の測定を行った(22日間)。(1)注入期間中、尿のpH,ケトン体などには異常はなく、窒素出納(1週間)は約1g/日の正の値(蓄積)を示した。また血液中の糖、インスリン、遊離脂肪酸、尿素も正常値を保った。しかし、注入2週間後から徐々に第一胃内pHの低下、血液中のTG、乳酸、CO_2の明瞭な増加が起こった。これらの結果から注入されたVFAーTGが初めは体組織でよく利用されたが、次第にその利用性が低下し、注入がより長期になれば栄養の破綻が起こることが示唆された。(2)糖負荷試験時の血糖半減時間と糖処理係数は乾草多給時の値と同程度であった。(3)Hyperglycemic clamp試験時の糖利用速度は乾草多給時の値より明らかに低かったが、インスリンに対する組織の感受性はむしろ高かった。現在、VFAーTGの混合比率をプロピオン酸優勢にした試験を行っている。 2.めん羊における骨格筋代謝:種々の栄養条件下の血液成分の変化に対する骨格筋組織の代謝の意義を明らかにする手段として、後肢循環血液成分の動静脈差測定を行った。アロキサン投与に伴い徐々に動脈血のインスリンは激減、糖、遊離脂肪酸、ケトン体は著増、尿中窒素排泄量は著増した。後肢組織への血液グルコ-スの取り込みは正常時と同程度、遊離脂肪酸、ケトン体は動脈血濃度の増加に伴って取り込みが増加した。一方、乳酸は組織から血液へ常時放出され、アミノ酸は経日的に組織から血液に放出される程度が増加した。
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