平成2年度の研究計画に沿って、ル-メンプロトゾア単独系によるトリプトファン合成を検討した。しかし、HPLCによるトリプトファンおよび関連インド-ル化合物の定量法を、本年度の科研費で購入したカラムオ-ブンを使用した安定した定量法として確立するのに予想外に多くの時間を費やしたため、研究は当初計画通りには進まなかった。本研究は、3年間継続の研究なので、次年度以降にこの遅れを取り戻す予定である。以下、本年度に得られた結果を報告する。まず、上述したように、カラムオ-ブンを使用したHPLCによる定量法を確立した。続いて、ヘイキュ-ブと濃厚飼料(3:1)を給与している山羊のル-メン内容物からプロントゾアを集め、その懸濁液を用いて、まず、インド-ルピルビン酸からのトリプトファン合成量を検討した。その結果、トリプトファン合成量は、経時的に増加し、また、0.25〜2.0mMの範囲内では、インド-ルピルビン酸濃度の増加に伴って増加した。培地中へのデンプン添加は、培地中の遊離のトリプトファン量を低下させる傾向が見られたが、差はそれほど大きくなかった。次に、インド-ル酢酸を基質とした場合のトリプトファン合成量を検討した結果、インド-ル酢酸からの合成量は微量と考えられ、基質濃度やデンプン添加の影響も認められなかった。続いて、放射性同位元素の使用によるトリプトファン合成の確認のための実験の予備段階として、濾紙クロマトグラフィ-によるトリプトファンのRf値を検討した。その結果、溶媒(1)酸:水:tertーブタノ-ル(10:295:695)および溶媒(2)フェノ-ル:水(775:215)(使用直前に、この溶媒94mlに対して、アンモニア水1mlを添加)で、それぞれ、0.88および0.79であった。
|