ル-メンプロトゾアのトリプトファン合成に関する微生物生態論的研究

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 02660296
• 研究機関: 宮崎大学
• 研究代表者: 小野寺 良次 宮崎大学, 農学部, 教授 (60040862)
• キーワード: トリプトファン合成 / ル-メンバクテリア / インド-ルピルビン酸 / インド-ル酢酸

研究概要

平成3年度の研究計画に沿って、ル-メンバクテリア単独系によるトリプトファン(Trp)合成を検討した。まず、無標識基質からのTrpの合成量及びその他の代謝産物の生成量を検討した結果、インド-ルピルビン酸(IPA)からは、培養12時間目で基質添加量の3.3%に相当するTrpが培地上清液中に増加した。これは、ル-メンプロトゾア単独系の4分の1に相当した。IPA添加時は、バクテリア単独系では、12時間目でその約20%がインド-ル酢酸(IAA)に転化したが、インド-ルやスカト-ルの生成はゼロであった。したがって、ル-メンバクテリアは、IPAを一部Trp合成に使い、残りの多くをIAAに変えてしまうと思われる。ただし、Trp合成については、菌体加水分解物中のTrpを定量していないので、真の合成量はまだ抑えられていない。この点は、今後さらに検討する必要がある。デンプン添加の影響はそれほど大きくはなかった。IAAを基質とした場合は、バクテリア単独系では12時間後約20%がスカト-ルに変わり、その以外の化合物の増減は見られなかった。Trpの合成も見かけ上はなかった。しかし、この場合も、今後、歯体加水分解物の分析が必要と考えられる。 ^<14>C標識化合物としては、IAAのみしか入手できなかった。標識IPAは、平成3年度調書の反省の項にも記したように、現在製造されておらず、これを作らせると、3〜4百万円もかかるとのことで、断念せざるを得なかった。入手した ^<14>CーIAAによる実験は、現在も進行中で、これまでの結果では、IAAは確かに菌体内に取り込まれていると考えられた。これは、IAAがTrpになったことを裏書するものである。この点は、まもなく、濾紙クロマトグラフィ-で確認する予定である。

研究成果

• [文献書誌] Takashi Nagasawa: "Rapid determination of tryptophan,indole and skatol in rumen fluid by HPLC" Japanese Journal of Zootechnical Science. 59. 93-94 (1988)
• [文献書誌] Ryoji Onodera: "In vitro metabolism of tryptophan by ruminal protozoa and bacteria:The production of indole and skatol and their effects on protozoal survival and VFA production" Animal Science and Technology(Japan). 63. 23-31 (1992)
• [文献書誌] Katsuya Okuuchi: "Tryptophan metabolism by rumen bacteria,protozoa and their mixture" Proceedings of the Third International Symposium on the Nutrition of Herbivores. 72 (1991)
• [文献書誌] Katsuya Okuushi: "A modified determination of tryptophan,indoleacetate,indole and skatole in rumen fluid using HPLC" Animal Science and Technology(Japan). 63. (1992)
• [文献書誌] Katsuya Okuuchi: "Characteristics of tryptophanase(crude enzyme)of mixed rumen ciliate protozoa" Animal Science and Technolgy(Japan). 63. (1992)
• [文献書誌] 小野寺 良次,他5名: "家畜栄養学" 川島書店, 340 (1989)
• [文献書誌] 小野寺 良次: "牛はどうやって草からミルクをつくるのかール-メンの秘密ー" 新日本出版社, 164 (1990)