研究概要 |
1.平成元年度までに,3ヶ月齢(体重約90kg)未満のホルスタイン種雄子牛に稲ワラ,トウモロコシ,コ-ン・グルテンミ-ル(CGM)を主体とする飼料を給与するとリジンが単独で強い制限となることが証明されたので,本補助金交付年度(平成2・3年)においては3ヶ月齢以降のホルスタイン種雄子牛について検討した.2.初体重90kgの子牛にCP含量13%の同種飼料を体重当り3.0%給与した場合,リジン単独の食道溝経由ル-メン・バイパス投与はN出納を改善せず,この場合のCP摂取日量は3.9g/kg,NRC飼養標準に基づくル-メン内分解性蛋白質(RDP)/代謝エネルギ-(ME)比は6.3g/MJであった.3.初体重170kgの子牛にCP含量15%の同種飼料を体重当り2.7%給与した場合もリジンは制限にならず,この場合のCP摂取日量は4.0g/kg,RDP/ME比は5.5g/MJであった.4.3ヶ月齢未満でリジンが制限となったのは微生物態蛋白質(MCP)合成量が少ないためであったが,3ヶ月齢以上でも低CPまたは高尿素飼料給与時にはやはりMCP合成量が不足することが示唆された.5.初体重140kgの子牛にCP含量11%の同種飼料を体重当り2.7%給与した場合,リジン単独の食道溝経由投与は有意,かつカゼイン投与と同程度にN出納を改善した.この場合のCP摂取日量は3.0g/kg,RDP/ME比は4.7g/MJであった.6.ARC飼養標準はRDP/ME比が7.8g/MJの時にMCP合成が最大になるとしているが,この基準はトウモロコシを主原料とする飼料では達成し難く,あまりに高すぎると考えられた.7.トウモロコシ主体で尿素を主なRDP源とし,さらにNRCが示すル-メン内CP分解率を用いる場合には,MCP合成は6.3g/MJで最大となった.8.しかし尿素態NのMCPへの転換効率は0.69と低く,したがって飼料由来の通常RDPの方が尿素態Nよりも転換効率が高い場合は,最適RDP/ME比がさらに低下する可能性も考えられた.
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