本年度の第一の研究目的は、実験動物における脳心筋炎(MEC)ウイルスの伝播機構の解明であり、第二はマウス以外のげっし類での糖尿病の誘発であった。これらの点について、以下のような成績を得た。 (1)EMCウイルスの体外排泄 10^5 PFU/headのEMCウイルスD株(EMCーD)を3種の経路(径口、経鼻、腹腔内)で接種したICR:CDー1マウス(5週齢、雄)の糞・尿を接種10日後まで経日的に採材し、ウイルス力価を測定した。その結果、尿へのウイルスの排泄は全く認められなかった。一方、糞中にはいずれの接種群でも接種4日後まではウイルスの排泄が認められ、とくに経鼻接種群では接種8日後まで認められた。ただし、10日後には全く認められなくなった。 (2)EMCウイルスの同居感染 上記と同様な方法でEMCウイルスを接種したマウスを無処置のマウスとフィルタ-キャップ付マウス用ケ-ジで同居させ(5+5/cage)、血中ウイルス力価を指標に同居感染が成立するか否かを検討した。その結果、腹腔内接種群では同居感染は全く成立しなかった。また、他の2群でも同居感染の成立が認められた個体はごく稀であった。 (3)マウス以外のげっし類での糖尿病の誘発 糖尿病合併症のモデルとしては、実験手技の点からマウスよりも大型のげっし類が望ましい。今回、数種のげっし類でEMCウイルス感染実験を行なった結果、マウス以外のげっし類としては初めてAPA系シリアンハムスタ-で高血糖症を誘発することが出来た。
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