研究概要 |
ウシヘルペスウイルス1型(BHVー1)主要糖蛋白のうちgIIIが宿主細胞への吸着に関与すること、並びにglVが吸着以降、おそらく侵入過程に関与することを既に報告している。今年度は、これらの糖蛋白遺伝子を単離し、塩基配列決定用ベクタ-並びに発現用ベクタ-にサブクロ-ニングすることをめざした。 gIII遺伝子に関しては塩基配列決定用並びにバキュロウイルス発現用ベクタ-へのサブクロ-ニングが完了しているが、バキュロウイルスとの組換え体は作成されていない。これと並行して本遺伝子をSV40系発現ベクタ-であるpcDLーSRaに組み込み、cos細胞での一過性発現を試みている。現在のところ蛍光抗体での確認はなされているが、その生物活性は検出されていない。この原因は、発現量が不十分なためとも考えられ、大量発現が可能なバキュロウイルス系を確立する必要性がある。gIV遺伝子に関しては、現在単離したものの末端に修飾を加えて上述のベクタ-にサブクロ-ニングしている段階である。 主要糖蛋白の塩基配列はカナダの研究グル-プにより決定されてしまったことから、本研究では株間の比較を行うこととした。その前段階として、4塩基認識制限酵素を用いて国内外の分離株を全ゲノムレベルで比較することを試みた。その結果、BHVー1ゲノムは従来考えられていた以上に多様生に富むことがわかった。また、複数の酵素を組み合わせることにより株の同定も可能になることが示唆された(第110回日本獣医学会発表)。 gIIIの生物活性を調べる過程で、本糖蛋白が宿主細胞表面のヘパリン様物質を認識し、それによって感染を開始することを明らかにした。 また、この活性が特定のアミノ酸に担われていることを推定した (Virology,181(1991))。
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