研究概要 |
本研究では,哺乳綱のナチュラルキラ-(NK)細胞が選択的に食菌するとされるStaphylococcus aureus Cowan I(SA)に対して、ニワトリglobule leucocyte(GL)が貧食作用を有するのか否かを明らかにし、報告者が従来明らかにしてきたGLのT細胞系列での分化過程をより明確にすることを目的として実験をおこなった。 ニワトリの血液より、GLを含むバッフィ-コ-ト分画を分取し、この分離細胞浮遊液にグラム陽性菌(SA)ないし対照としてグラム陰性菌2種を加えて培養し、経時的に固定して光学および電子顕微鏡下で精査した。また補体の有無についての条件下でも同様に検討するとともに、合わせて血液中における同細胞のクリアランスの過程についても観察した。得られた知見は下記の通りである。 1.GLには、SAとの混合培養により、II型果粒の増加や細胞突起の伸張等の細胞活性化の兆候が観察されるとともに、GLと思われる細胞による食菌作用が極く稀にではあるが認められた。 2.SAに対する食菌作用を培養直後から示す細胞は、栓球および偽好酸球であり、これらの細胞がSA除去の主体をなすとともに、単球による食菌作用はやや遅れることが明らかとなった。また、その超微形態学的な詳細についても明らかになった。 3.SAに対する食菌作用への補体の影響は認められなかった。 以上の結果から、ニワトリGLも哺乳綱のNK細胞と同様にT細胞系列ら属しながら、ミエロイド幹細胞に極めて近い分化過程をとることが示唆されるとともに、ニワトリ血液におけるSAのクリアランスの様式が明らかとなった。これらの成果は近日中にまとめて公表する予定である。
|