研究概要 |
本研究は成長に伴うジギタリス感受性変化(収縮力増大作用における)にNaチャンネルの関与の可能性があるかどうか検討したものである。本年度分では[^3H]ouabain結合実験と細胞内Na濃度測定実験について記載する。 1.胎児(妊娠21日齢)および成熟(4カ月齢)ラット心筋における[^3H]ouabain結合実験 本実験には胎児および成熟ラット心室筋ホモジェネイトを使用した。[^3H]ouabainの培養時間を30分と決め、その結果をもとにscatchard plot解析を行った。その解析から胎児および成熟ラットとも結合部位は2箇所であることが明らかになった。胎児における高親和性結合部位および低親和性結合部位のKd値はそれぞれ26nMおよび1.01μM,Bmaxはそれぞれ195fmol/mg蛋白および1473fmol/mg蛋白であった。一方、成熟ラットにおける高および低親和性結合部位におけるKd値は104nMおよび1.17μMであり、Bmax値はそれぞれ632fmol/mg蛋白および2603fmol/mg蛋白であった。本実験から高親和性部分が成長に伴い低親和性部分に量的に近ずいていることが判明した。 2.胎児および成熟ラット心筋における細胞内Naイオン濃度測定実験 本実験において成熟ラットは左心室乳頭筋を、胎児ラットでは心室筋片を用いた。細胞内Na濃度はNaセレクテブ微小電極を用い細胞内Naイオン活性として求めた。しかし、この研究は現在進行中であり、現時点では成熟ラットの細胞内Naイオン濃度活性を測定したにとどまっている。そのイオン濃度活性は刺激頻度1Hzにおいて約6.5mMであった。 前年度の収縮力記録実験では成長に伴うdigitalis感受性変化にNaチャンネルはかなり関与していることを推測させる結果を得た。本年度の研究結果はdigitalis受容体の生化学的変化もその成長に伴う感受性変化に大きな役割を果たしていることを示唆している。
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