研究概要 |
平成2年度は,ラットの大動脈および肛門尾骨筋における選択的なα_1受容体作動薬のフェニレフリン収縮について検討した。正常栄養液にフェニレフリン(10^<ー6>M)を適用すると,両筋はともに収縮を発生し,これらの筋はいずれも最大収縮のレベルにおいて持続した。Ca^<2+>除去液中でフェニレフリンを添加すると,一過性収縮を生じ,その後Ca^<2+>(2.5mM)を添加すると,2相性の収縮(最初の相をTonicーI,後半の相をTonicーIIとする)が両筋で認められた。フェニレフリンを適用した時の肛門尾骨筋の一過性収縮は大動脈のそれに比べ極めて小さかったが,Ca^<2+>遊離阻害剤(プロカインおよびライアノジン)により大動脈におけると同様に抑制された。両筋のTonicーI収縮はイノシト-ルリン脂質代謝阻害剤(NCDC,ネオマイシン,キナクリンおよびHー7)でそれぞれ抑制された。また,TonicーII収縮は有機Ca^<2+>拮抗剤(ニフェジピンおよびニカルジピン)処置によりそれぞれ抑制された。さらにCa^<2+>促進作用をもつBay Kー8644により,両筋のTonicーII収縮は増強された。以上の結果から,ラット大動脈および肛門尾骨筋におけるフェニレフリンを適用して生ずる収縮は3つのコンポ-ネントから成り,種々の阻害剤の適用の効果から,両筋のフェニレフリン収縮が筋小胞体のCa^<2+>遊離,Ca^<2+>の流入および収縮蛋白系のCa^<2+>感受性の増加にそれぞれ関連すると思われる成績が得られた。このうちCa^<2+>感受性の増加は,セカンドメッセンジャ-であり,かつイノシト-ルリン脂質代謝によって産生されるジアシルブリセロ-ルがプロテインキナ-ゼCを活性化する機構の関与する可能性が示唆された。この点に関しては,ラット大動脈および肛門尾骨筋の成績に定性的な差異は認められなかったが,次年度にはさらに両筋のCa^<2+>感受性の定量的な差違を比較検討する予定である。
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